でんおちくんの計算根拠
このページは、計算画面(電圧降下・電線サイズ・許容電流・kW⇔Aの各タブ)に掲載している計算式・係数・判定条件の技術的な根拠をまとめたものです。数式・係数・判定条件は計算画面の実装と同一で、このページ用に変更・簡略化はしていません。
1. 電圧降下の基本的な考え方
計算式:e = k × L × I ÷(1000 × A)
これは内線規程の簡易(近似)式による参考値です。実際の設計・施工では最新の電気設備技術基準・内線規程および現場条件に従って確認してください。表示している「電圧降下率」は、この e を使用電圧で割った割合(e ÷ V × 100)です。
2. 配線方式ごとの計算(係数k)
k=35.6(単相2線式)/17.8(単相3線式・三相4線式の幹線、対地基準で固定)/30.8(三相3線式)。
単相3線式・三相4線式は、開閉器~分電盤のような幹線を対地(外線-中性線/相-中性線)基準で計算するのが実務の標準的な使い方のため、常に17.8を使います(平衡していれば線間側で見ても電圧降下率は同じです)。線間だけを使う独立した回路は「単相2線式」「三相3線式」を選んでください。
3. 単相3線式の扱い
単相3線式は、100V負荷・200V負荷の比率にかかわらず常にk=17.8(対地基準)で計算します。単相3線式の内部に「100V/200Vの切り替え」のような操作はありません。
分電盤から先の独立した200V専用回路(線間だけを使う回路)を計算したい場合は、単相3線式ではなく「単相2線式」を選択してください。三相4線式と三相3線式の関係も同様です。
4. 負荷容量(kW)から電流への換算
負荷(kW)から電流を計算する場合:単相3線式は総負荷(100V・200V合計)を「2×電圧」で、三相4線式は総負荷(3相合計)を「3×電圧」で割って外線・各相の電流を求めます(片側だけの負荷を入力する場合は「電流を直接入力」をご利用ください)。
kW⇔Aタブの換算式は次のとおりです。
- 三相:I = P×1000 ÷(√3×V×cosφ) / P = √3×V×I×cosφ ÷ 1000
- 単相:I = P×1000 ÷(V×cosφ) / P = V×I×cosφ ÷ 1000
kW⇔Aタブでは、kWとAのどちらか片方の欄に数値を入れると、もう片方が自動計算されます。
5. Aについて(実断面積と呼び方sq)
14sq以上(より線)は規格上の呼び方(sq)がそのまま実断面積なのでその値を使用します。1.6/2.0/2.6/3.2mmは単線の直径から定まる「呼び方sq」(許容電流表で使う便宜上の対応値、2/3.5/5.5/8sq)と実際の幾何学的断面積が一致しない(例:2.0mmは呼び方3.5sqだが実断面積は約3.14mm²)ため、電圧降下の計算には実断面積(約2.01/3.14/5.31/8.04mm²)を使用しています。許容電流の判定には規格通り呼び方の値を使います。
6. こう長Lと全経路こう長L'
「こう長L」と「全経路こう長L'」の違い:電圧降下そのもの(V・%)はLで計算するこの区間だけの値です。一方、許容値が60m以下/60m超のどちらの区分になるかは、供給変圧器2次側端子または引込線取付点から最遠端の負荷までの合計であるL'で判定します(内線規程1310節)。幹線+分岐回路のように複数区間をつなげた経路の一部だけを計算する場合は、L'に全区間の合計を入力してください(未入力ならLと同じ=1区間で経路が完結しているものとして扱います)。
7. 部分区間の計算
60m超の区分(1310-1表)は全経路の電圧降下合計に対する値のため、部分区間の計算では「この区間だけでの合格」は表示せず、他区間との合算確認を促す表示にしています。一区間だけで全経路許容値を超えている場合は、その時点で不合格と判定できます。
電線サイズタブで部分区間の推奨サイズを算出する場合は、全経路許容率をそのまま使わず、その区間に割り当てる設計許容率を入力したうえで計算します。
8. 許容電圧降下率(内線規程1310節)
許容電圧降下率は、こう長(60m以下か60mを超えるか)、供給方式(電力会社からの低圧受電か構内変圧器からの供給か)、回路条件(分岐回路か幹線か)等によって異なります。でんおちくんでは、これらの入力条件に応じて許容値を自動的に判定・設定します。
この判定は内線規程 JEAC8001-2022の考え方に基づいています。具体的な適用区分・数値、および最新の内容は、内線規程原本でご確認ください。
許容値は自動で入力されますが、必要に応じて手入力に切り替えることもできます。
9. 許容電流
数値は電線メーカー公表資料(昭和電線ケーブルシステム・フジクラダイヤケーブル等)・内線規程準拠の許容電流表を基に作成(気中・暗渠布設が基本)。IV線は「がいし引き」または「電線管に収める本数」により大きく変わるため芯数ではなく布設条件で選びます。VVFは実務で流通する1.6/2.0/2.6mmのみを掲載。CVD・CVTは単心を2条・3条よりで密着させた構造のケーブル固有の表を使用しており、単なる単心の値とは異なります(周囲温度40℃基準)。
単相3線式で3心ケーブルを使う場合、中性線には(平衡時)電流が流れないため、メーカーの許容電流表でも2心の値を採用するのが一般的な扱いです(電圧降下計算のk定数17.8とは別の話ですが、どちらも「単相3線式では中性線の負荷が本質的に軽い」という同じ物理的背景に基づいています)。CVTは3心一括の値を持たないため単3判定は表示されず、その3個より品の許容電流をそのまま使います。
キャブタイヤは製品ライン(2TC-RB/RH等)によって数値が異なるため、信頼できる表が確認できたものだけを掲載しています(4種は確認できていないため未掲載)。VVF/VVRの4心・VCTFの大サイズ等、資料が乏しい項目は選択時に個別の注記を表示します。
10. 詳細電圧降下計算(R・X使用)
簡易式(e=kLI/1000A)はケーブルの交流抵抗のみを考慮した近似式で、太い電線・長いこう長ではリアクタンス(X)の影響を無視できなくなり、実際の電圧降下を過小評価する場合があります(目安として100sq超・こう長100m超では要注意)。
CV・CVD・CVTを選んだ場合は「詳細電圧降下計算(R・X使用)」で、日本電線工業会 技資第103号C(2026年8月改正、最新版)原本に基づくR・X値を使った詳細式(ΔV=K・I・L・(R・cosφ+X・sinφ))に切り替えられます(CVは2/3心一括シース形と4心一括シース形、CVD/CVTはデュプレックス/トリプレックス形として別データを使用)。
CVD/CVTのデュプレックス/トリプレックス形は複数ソースの照合で数%以内の端数差が残りますが、簡易式(リアクタンス無視)による誤差の方がはるかに大きいため、詳細計算の対象としています(8sq以下はデータがないため簡易式にフォールバック)。
11. 推奨電線サイズの決め方
「推奨電線サイズ」は、電圧降下・許容電流の両方の条件を満たす最小サイズです(許容電流は選んだケーブルの種類・配線方式から自動で対応する芯数の許容電流表を使用。三相4線式は4心の値で判定する簡略化をしています)。
12. 対応している電線・ケーブル
IV(絶縁電線)、VVF、VVR、CV、CVD(単心2個より)、CVT(単心3個より)、600V 2TC-RB/RH、600V 2TCLight(2PNCT)、600V 3TC-RB/RH、VCT、VCTFに対応しています。データの出典・確認度は内部資料(DATA_SOURCES.md)で管理しています。
13. 計算結果を使用する際の注意
理論値・参考値と、実際の施工判断は区別してください。資料間でR・X値等に小さな差がある場合でも、その差が最終的な電線選定や電圧降下判定へ実用上影響しない場合は、過度に「誤差ゼロ」を目的とはしていません。
一方、以下は重大な問題として扱っています。
- 誤った配線方式・係数を使用する
- 許容電流判定を誤る
- 電圧降下率の判定条件を誤る
- 全経路と部分区間を混同する
- 単相3線式の総負荷電流計算を誤る
- 使用不可の電線サイズを推奨する
- 異常入力から正常判定を出す